崎陽軒の「シウマイ弁当」変わらぬ味には理由がある。“冷めてもおいしい”をテーマに貫く、117年目の物語。

横浜市民のソウルフードとして親しまれている崎陽軒の「シウマイ弁当」。創業から117年目を迎えた老舗ブランドでありながら、今では横浜市内だけでなく、県外にも多くのファンを持つ名物弁当です。1日の平均販売数はおよそ3万個にものぼり、「日本一売れている駅弁」と称されるのも納得の人気ぶりです。

そんな崎陽軒の本社は、横浜駅東口から徒歩1分というアクセス抜群の立地にあります。今回は、崎陽軒マーケティング本部 広報・販売促進部の山本様に、「シウマイ弁当」の変わらない味へのこだわり、新たな挑戦についてなど様々なお話を伺ってきました。

名物“シウマイ”の誕生

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1908年、現在の桜木町駅にあたる初代横浜駅で小さな売店として誕生した崎陽軒。創業からシウマイやシウマイ弁当を販売していたと思われがちですが、実は、当時の主な取り扱い商品は牛乳やサイダーなどの飲み物や、お餅やお寿司などの食べ物でした。

そんな中、1923年に関東大震災が発生。崎陽軒があった横浜も大きな被害に見舞われました。被災した横浜の景色を目の当たりにした初代社長・野並茂吉が一念発起し、「横浜や崎陽軒を立て直すためには、名物が必要だ!ないなら名物をつくろう」そんな強い使命感から横浜名物を探す旅が始まります。

まず横浜といえばの中華街に足を運び、当時の南京町を練り歩き何か名物になりそうなものはないかと探します。すると、どのお店でも突き出しとして熱々のシュウマイが提供されていることに気付きました。

これなら横浜名物になるかも……と目を付けたものの、冷めた状態で提供する駅弁で熱々のシュウマイを出すのは難しい。ということで、“冷めてもおいしい”を目標に掲げたシウマイづくりがスタートします。

約1年の開発期間を経て、“冷めてもおいしい”シウマイが完成したのは創業から20年後の1928年。干帆立貝柱を加えることで、崎陽軒が目指すシウマイの味わいが実現されました。

シウマイの売り上げがだんだんと軌道に乗り始めた頃、シウマイをメインにした幕の内風のお弁当づくりを企画。そこで誕生したのが「シウマイ弁当」です。シウマイ誕生から26年後の1954年の出来事でした。そして、電車内でも食べやすいようにと、シウマイは一口サイズに成形。この心遣いも、多くの人々から長く愛されてきた理由の一つなのかもしれません。

ちなみに、崎陽軒ではなぜ「シュウマイ」や「焼売」ではなく、「シウマイ」と表記されているのかと理由を尋ねると、栃木出身の初代社長に栃木なまりがあり「シュウマイ」を「シーマイ」と言っていたからだといいます。本来の発音を調べてみると、「シィーマイ」や「シャオマイ」に近いことが分かり、カタカナで記すには「シューマイ」よりも「シウマイ」のほうが好ましいとのことで、崎陽軒では表記を「シウマイ」に統一するに至りました。

すっかり根付いた浜っ子のソウルフード

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横浜出身の方にとって、崎陽軒は「思い出と共にある味」。卒業式や運動会、横浜スタジアムでの野球観戦など、人生の節目節目に登場する崎陽軒の味は、もはや“地元の文化”“ソウルフード”と言える存在です。実際、お電話での受注時には「横浜出身です。崎陽軒を愛しています!」とお客様から熱いお声を直接掛けられたこともあるとのこと。地元の人々にこれほどまでに深く愛されているブランドは、全国でも稀有な存在でしょう。

「シウマイ弁当」は誕生からベースは変わっていない、という点も、長年愛され続けている理由なのではないかと山本さんはいいます。世の中には、大幅なリニューアルを重ねて、成熟していく商品も多くありますが、崎陽軒の「シウマイ弁当」は“変わらない味”を大切に、ロングセラー商品として人々の間に根付いています。

時折、マイナーチェンジをすることもあったそうですが、基本的には食材の安定供給の面やお客様の声を踏まえて内容を変更している「シウマイ弁当」。2003年以降は変わらず現在のラインナップだと言います。

干帆立貝柱を混ぜ込んだ「シウマイ」を軸として、幕の内弁当に欠かせない「焼き魚、蒲鉾、玉子焼き」。そこから、シウマイとの相性・味のバランスを見て「筍煮、切り昆布&千切り生姜、あんず」をチョイス。

過去には、あんずの代わりにさくらんぼが使われていた時期や、発売当初は鮪でなはく鰤の照り焼きが入っていた時期もありました。玉子焼きが消えたり戻ったり、唐揚げがエビフライだった時代も……!

2022年、コロナ禍に鮪がどうしても手に入らなくなってしまった時は、1週間限定で鮭に変更したこともあるといいます。

いつもの「シウマイ弁当」をお届け出来なくて本当に申し訳ない気持ちで販売したものの、お客様からは『逆に食べてみたい』という声が殺到しすぐさま完売したのだそう。

お弁当はさることながら、掛け紙も注意書きが記載された限定デザインのものに変更されており、「シウマイ弁当」の“掛け紙”マニアの方からも『一週間しか手に入らないから絶対に欲しい』との声を沢山いただいたという驚きのエピソードも。

変わらない味を守る立役者

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現在、1日平均3万個が製造・販売される「シウマイ弁当」。冷めてもおいしい「シウマイ」やバリエーション豊かなおかず、俵型のごはんが印象的ですが、崎陽軒の味を守っているとても大事な立役者がいます。それは、経木(きょうぎ)でつくられたお弁当箱。
“経木”とは、薄い木の板のこと。主な材質は、スギ・マツなどの針葉樹で、プラスチック製の包装資材と違い、適度に水分を吸収する作用、ほどよく調湿する作用があり、ごはんやおかずを乾燥させることがないのが特徴です。崎陽軒の「シウマイ弁当」は、ごはんやおかずの上にも薄い経木の蓋を被せることで、冷めてもおいしい風味を保っています。

炊き方にもこだわりがあり、「シウマイ弁当」のごはんには、「蒸気炊飯方式」という独自の炊き方が採用されています。こうすると、ふっくらモチっとした食感に炊きあがり、冷めてもおいしさが持続するといいます。そんなこだわりのごはんを経木で出来た容器に詰めることで、まるでおひつに入れたごはんのように、べたつかず、モチモチの食感を維持したままキープ出来るのだそう。“冷めてもおいしい”にこだわる崎陽軒において経木のお弁当箱は欠かせないアイテムになっています。

思わずコレクションしたくなる名脇役

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70周年記念ひょうちゃん(大)・70周年記念ひょうちゃん(小)

崎陽軒といえば「シウマイ」ですが、名脇役として忘れてはならない存在がいます。それは、しょうゆ入れの「ひょうちゃん」です。2025年1月でひょうちゃんは誕生70周年を迎えました。現在、70周年記念ロゴ入り特別包装、70周年記念ひょうちゃん入り シウマイ製品が発売中なので、気になる方はぜひチェックしてください。

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ごくわずかな数量で封入されている金色の「70周年記念ひょうちゃん」

ひょうちゃんが誕生したのは、1955年。三種の神器と呼ばれる「白黒テレビ」「冷蔵庫」「洗濯機」が爆発的にヒットした年でもあります。

当時は、のっぺらぼうの磁器製のひょうたん型のしょうゆ入れだったのですが、漫画家の横山隆一さんが、『目鼻をつけてあげよう』と、いろはにちなんだ48種類の絵柄を描いたのがひょうちゃんのはじまりだといいます。

初代のデザインが横山さん、2代目のデザインは、ミスタードーナツのデザインで有名なイラストレーターの原田治さんが手がけていました。現在は、横山さんのデザインに戻っていますが、ひょうちゃんの厚みが変わっていたり、コルク栓が衛生面を考慮したゴム栓になっていたりと、ちいさな変化があります。

他にも、様々な企業とコラボしたり、還暦記念の赤いちゃんちゃんこを羽織ったひょうちゃんが登場したりするなど、コレクター心をくすぐる可愛らしく素敵なデザインで溢れていました。

「変わらない味」と「新しい驚き」を届ける

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昔ながらの味を大切にしながらも、新しい挑戦を止めない。これこそが崎陽軒の真骨頂です。「シウマイ」や「シウマイ弁当」のイメージが強いかもしれませんが、実はお菓子やオリジナルグッズ、コラボ弁当の販売など様々な取り組みを実施しています。

直近では、2025年4月に、「トマト香るピラフの洋食弁当」という新商品を発売。崎陽軒唯一の洋食弁当という新たな挑戦であり、注目してほしい一品だと山本さんは語ります。

干帆立貝柱を使ったシウマイやおかず、俵型のごはんなど、誕生から変わらないおいしさを守り続けながら、一方で、月に4回ほど新商品を発表するという“攻め”の姿勢も併せ持つ崎陽軒。老舗としてのイメージを良い意味で裏切りながら、新たなファン層を開拓しています。

時代に寄り添いながらも、ぶれない信念でおいしさを届けるその姿勢は、まさに“攻めと守り”を両立する名店ならではの矜持です。

横浜が誇るソウルフード「シウマイ弁当」は、ただの駅弁ではありません。地元に愛され、旅行者に感動を与え、今も進化し続けるその背景には、並々ならぬこだわりと情熱があります。これからも変わらぬ味を守りつつ、新たな挑戦を続ける崎陽軒の姿勢に、心を打たれました。ぜひ、次の横浜訪問では、改めてその味をゆっくりと噛みしめてみてください。

また『崎陽軒』×『大和田伸也』の動画も公開しているので是非ご覧ください。

『崎陽軒』本店の店舗情報

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〒220-0011 横浜市西区高島2-13-12 崎陽軒本店
電話 045-441-8827

▼アクセス
■電車をご利用の場合
横浜駅東口の階段を上がり、横浜中央郵便局の方へお越しください。郵便局の向かいです。

■お車でお越しの場合
万里橋方面よりみずほ銀行を左側にお入りください(一方通行です)。左手に見えますヨコハマジャスト2号館の立体駐車場をご利用いただけます。
※崎陽軒本店にてお食事3,000円以上ご利用のお客様は2時間無料とさせていただきます。
※車両サイズ制限:高さ155cmまで、幅180cmまで、長さ500cmまで
※横浜駅東口付近の駐車場は提携駐車場ではございませんので、駐車料金はお客様のご負担となります。
横浜駅東口地下街ポルタから直接つながっております。エレベーターも完備しております。

▼営業時間
前日 10:00 ~ 20:00
※営業時間は、状況により変更する場合がございます。

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